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稲原城―。
「オギャー、オギャー!」夜の静けさを掻き消すように産声があがった。
「でかしたか!?」
城の主、美輪成定が部屋に飛び込んできた。
「おめでとうございます!男の子ですぞ、殿!」
「うむ!どれ…」
赤子を抱き上げる。
「おぉ、可愛いのぅ。こやつわしに似ていい男になるぞ!アハハ…」
「殿、お名前を…」
妻のおたかが言った。
「名前はもう決めてある。竹のようにまっすぐにすくすくと育つように、『若竹丸』じゃ!」
こうして嵐のような戦国の時代に一人の赤子が生まれた。
この先、この若竹丸にとてつもなく大きな苦難の道が待ち構えていようとは……
この時、誰も知る由もありませんでした。
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