理不尽なT

2/2
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
これは、中学の体育の時の出来事である。 朝から小雨が降り、グラウンドは少しぬかるんでおり、そこでサッカーをする事になった。 その日は、なんとなく気分が良さそうなTと、いつもの友人グループと組んでパス練習をする事になった。 皆、特にサッカーが上手い訳でもなく、ただ適当にダベリながらパスを出しあっていた。 そして私からTにパスを回した時、ボールが泥の轍に引っかかってから、Tに渡る事になった。 私が、 「イレギュラーバウンドしちゃったよ~ボールが泥まみれになっちゃったなぁ」 と軽く笑いながら話していると、急にTの表情が険しくなり、何やらブツブツ呟いている。 「どうしたっやT、なんかあっとや?」 と話しかけると、 「おニューやったとに…」 とT。 「へ?何がおニューなん?」 とキョトン顔で聞き返す私。 すると、 「靴がさぁ!今日、靴買ったばかりやったっぞ!お前のせいで靴の汚れたやっか!買って返せ!」 と何やら興奮している。 「ゴメンさぁ」 と謝るが、まだご立腹の様子。 友人達も宥めに入ると、Tは、クールダウンをしに行った様子。 すると数分後、何喰わぬ顔でTは戻って来た。 一応もう一度 「ゴメンな…」 と伝えると 「あぁ」 っと返事が、かえって来た。 その後は、普段通りの仲に戻り、体育の時間は過ぎた。 グラウンドから教室に戻る際、Tを宥めてくれた友人達から 「お前、災難やったなぁ~。でも、雨の日なんかに、新しい靴履いてくるTもTだよなぁ~汚れるの目に見えてんじゃん!それでキレられてもねぇ~」 と私を笑って慰めてくれた。 「あははっ…」 と私は苦笑いをするしかなかったが、 「全くその通りである。」 と心の中で頷いた。 このような理不尽な話しは他にもあるが、それは別の機会に。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!