Tの勇姿

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これは、朝、Tを含む、いつもの友人グループと待ち合わせして登校した時の話しである。 その当時、Tは気になるゲームや買ったゲームは必ず攻略本やゲーム雑誌を集めていた。 その日も、暇潰しの為に、ゲーム雑誌を鞄の中に持って来ていた。 「T、先生に見つかって取られても知らんぞ~」 「あとで読ませてなぁ」 「どこまで攻略したっや?」 などゲームの話しで盛り上がりながら歩いていた。 そして、校門が目についた。 朝という事もあり、挨拶運動の担当をしている生徒が立っていた。 しかし、いつもと様子がおかしい… よ~く見ると挨拶運動をしている隣に、珍しく生活指導の先生が立っていたのであった。 「やばかやん、あれって持ち物検査じゃなかと?」 「T大丈夫とや~俺知らんぞ」 「はよ、隠さんね」 と、はやしたてる友人達。 それでも微動だにせず、歩き出すT。 何か、男気なるものを感じたが、Tの後に続き、歩くしかなかった。 そして、校門に辿り着いた。 やはり持ち物検査であり、Tの出番となった。 先生が 「この雑誌は何や?学校に持ってきたらいかんやろうが!」 と注意をしている。 するとTは、 「これは今日の美術の授業と部活で使うんです」 と優等生っぽい口調で答えた。 私達は、 「プッ」 と笑いそうになるが、Tの勇気ある行動を無にしない為にも、耐えた。 すると先生は、 「それなら仕方がないなぁ…美術と部活以外は、読むなよ!」 とあっさりと終わってしまったのである。 「マジかい!」 と我々は、心の中でツッコミながらも、なんとか笑いを堪えた。 「では、先生、行きますからね」 っとTは、何事もなかったように、余裕の表情で校内に入って行った。 我々は、特に問題もなく通過したが、堪える事に限界が来ており、急いでTの後を追った。 Tと合流した瞬間、ドッと笑いが止まらなくなった。 「お前やる~」 「今日は、美術の授業なんてなかやろ~」 「お前、帰宅部やろうが~」 「あの生活指導の先生もアホやなぁ」 とツッコみどころ満載である。 そんな言葉も尻目に 「まぁな!」 と一言。 哀愁漂う口調のTに、男らしさを感じながらも、妙にムカつきさえ覚えた。 “こういう時だけ”頭の機転が効くTの凄さと度胸(無鉄砲さ)に改めて関心させられたのは、言うまでもない。 因みに、Tの成績は後ろから数えて10位以内に入る強者である。
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