第二章 出会い

9/15

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
その日は俺の歓迎会だといって練習後みんなで居酒屋へ向かった。大学入ってはじめて交す酒だった。テニスサークルの人達は次々にグラスを空け、盛り上がっていた。「矢内君、ありがとう」夏実が飲み掛けのグラスを持って俺の隣へ来た。「みんな馬鹿でしょ(笑)でもみんないい人達だから。」いつもの俺をからかう口調では無かった。そんな夏実に正直ドキドキしてた。今まで感じた事の無い、胸が締め付けられるような。少し酔いが回ってたせいもあって自然に話せた自分が居た。と言っても、夏実に質問ばかりしていたけど。夏実はそんなぎこちない質問にも一個一個いつもの笑顔で返してくれた。中学の頃に両親が離婚したこと。妹がいること。週末は結婚式場でアルバイトをしていること。でも一番聞きたい事は聞けなかった。あの日見た、あの事だけはどうしても聞けなかったんだ....時間は11時を回り、そろそろお開きにしようとなった。「じゃー最後、矢内コーチに絞めてもらいましょ~(笑)」夏実が言うと拍手が起こり、皆の視線が俺に集まった。なぜだろ。言わなくてもいい事まで言っていた。本当は万年補欠だった事。でもサークルの皆は優しく拍手してくれた。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加