錦戸信久

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ビル内に入ると周りのあちこちに埃やゴミが散乱していた   紗英『ここ…人住んでるのかな?』   紗英の言葉に私達は首を傾げる   人の住んでる気配もしない   政樹『でも標識に探偵事務所って書いてあるからいるんじゃないか?』   政樹が指差す方を見ると、確かに2階の欄に錦戸探偵事務所と書いてあった   ただ他の階には標識がなく、探偵事務所だけが寂しげに表示されていた   ギギギッ…ウィーン…   後ろから音がしたので振り返ると、美紀がエレベーターを1階に降ろしていた   美紀『さっ。早く行こうよ』   既にエレベーターの中に入っている美紀に続き私達も入った   ギシッ…ギシッ…   エレベーター内を歩く度に軋む音がする   朋香『これ……大丈夫?』   不安げに美紀に言うと『多分…』と、苦笑いで返され、私も苦笑いしてしまった   扉が閉まり、エレベーターが上へと上がっていく。   1階から2階に着くまでの短い間も軋む音は鳴り止まず、全員が直立不動状態になっていた   チンッ…という音と共に扉が開き、私達は逃げるようにエレベーターから出た   出た後に美紀が   美紀『帰りは階段で行こうね』   と、呟き   私達は何も言わず頷いた
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