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「当然と言えば当然、か」
此処はマヨヒガからは百里程離れた林のなかである。未だ雪が残る森の中桜火は立ち尽くしていた。
「そもそも侵入者など有るはずもないか。……タラの芽はどうしようもない」
それでも探すのは従者の宿命なのか。雪を踏みならし奥へと進んでいく。
(何故紫様はこんなことを命じた?)
探しモノをしながらこの行動の意味を考える。そもそも最初からおかしかったのだ。
(白玉楼が春を集めた事が?…いや違う)
起きない筈の紫が起きたここが一番の問題だ。
春を集めた為に何かが起きようとしている。
だがまだ足りない。他に決定的な違和感があるはず。
周囲を警戒しながらも思考は止めない。もっとも見つかりはしないのだが。
タラの芽も侵入者も…
(侵入者!これか…違和感の正体は)
有り得ない筈の紫の起床、そして起床と同時に桜火と橙にした命令。
細部は違えど前提条件は全く同じ。つまり、
(マヨヒガに侵入者が来る!)
直後桜火は飛び上がり一直線にマヨヒガに向かう。
脳裏に浮かぶは化け猫の少女彼女の安否を確かめるために彼は出せる最高速度を出す。
彼の瞳には遠く行われる弾幕ごっこの残映が映っていた。
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