天気雨の別称Ⅰ

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 「なんか楽しそうだなぁ・・・」  秋勾が邪魔するのも悪いかな、と先に出ていこうと挨拶したら、菊代が引き止めた。  「・・・あ、ちょっといいかしら」  「はい、何ですか?」  「そのお札は次ここにくるまで剥がしちゃダメよ。それと、誰にも口外しないこと」  「はい、わかりました」  「そう・・・それじゃ、車に気をつけてね」  「さようなら~」  そして神社から出た時は、日はもう落ちていた。ギリギリ地平線から見える朱色だけでは足元が確認出来るか出来ないかくらい。  時間帯的に会社勤めの人が帰るところで、駅前では人が溢れかえっていた。その中を秋勾は流されないようにしながら歩いているが、すれ違う人を不思議そうに眺めていた。  それはいつもとは逆で、視えないことに不思議を感じていた。いつもは飽きるほどくっきりと見えるものが、今は視えない。  それは当たり前のことだったが、秋勾には物心ついた時から、視えていることが当たり前だったので、逆に違和感を感じていた。  いつものことがいつもでない、強制された制限。秋勾は心のどこかで何かを取られた感じを拭えないまま、家へ帰った。
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