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何事かと周りを見回すと・・・いた。そしてあった(ケータイが)。
それは狐だった。金色と見間違うほど、太陽に反射する明るい黄色の毛並みに、体の端的な部分のみ黒い毛を有する、細長い狐。
ひゅっとした綺麗な毛並みの頭の先端に、目当てのものをくわえていた。見る限りは大丈夫そうだが、よだれでべたべたそうなそれ。・・・なぜかはわからないが、ケータイをくわえていた。
光りものが好きなのかなぁ、と呑気なことを考えながらその狐にそっと手を伸ばす。なるべく優しくそうしたつもりだったのだろうが、狐は用心深く一歩後退した。
渡したくないのだろうか。秋勾はチ、チ、チと舌を鳴らしながら、腰をかがめて手を伸ばし、下手に出る作戦。狐はそ~っと、警戒しながらだが寄って来た。そのまま、そのまま・・・と。
「あっ」
そのまま近寄れば、あと少しで取れそうだったのだが、何を思ったか狐は体の向きを180度変え、素早く走り去ってしまった。
秋勾はその姿をしばらくポアッと眺めていたのだが、よいしょっと、と腰を上げてそのあとを追いかけた。ちょうど三叉路の右に走って行ったよな、とその右へ足を進める。
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