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その先は一本道で、時代の境目みたいな道だった。
というのも、道の右側はきちんと舗装された道路や高層ビルが立ち並んでいる、人の手の入った近代的なものなのだが、左側は田んぼや畑が一望出来る、だだっ広い自然のまま、という田舎のようなものだった。
その不思議な境目の中心に流れるぶつ切れの白線の上に、奴はいた。賢そうな顔で、秋勾をじっ、と見つめている。依然、ケータイをくわえたまま。
秋勾がきたのを確認し、自分の姿を確認させたのを理解していたように、その金色の塊は左側に向いて跳んだ。・・・その先は、小高い山の入口の茂みだった。
秋勾はどうしようか、と迷ったが、ケータイを取られたままではしょうがないので、仕方なくその後を追いかけることにした。
茂みが邪魔かな、と思っていたが、案外茂みは入口のみで、抜けたあとは雑草が茂っているだけの広げた獣道だった。・・・その奥の方のギリギリ視認出来るところに、狐はまたじっと秋勾を見据えて立っていた。
秋勾が進んでいくと、狐はまた走って遠ざかる。そしてまた遠くから秋勾を静かに眺めるのだ。・・・まるで、何処かへ案内しているように。
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