2857人が本棚に入れています
本棚に追加
腰まで届く長い細い綺麗な金髪が、風に流れてさらりと川を流す。
秋勾は思わず見とれてしまったが、少女の眉が吊り上がっているのを見て、慌ててたたずまいを正した。
「・・・これ」
少女はなぜか不機嫌そうな顔で右手をぶっきらぼうに差し出した。・・・見ると、さっきまで一応必死に探していたケータイが手の平に。しかもやっぱりべとべとだった。
少女はべとべと自体は気にならなかったようだが、ホントに何がご立腹なのか、という表情でそれを差し出していた。秋勾があっけらかんとしていると、少女が催促した。
「これ、あんたのでしょ。違うの?」
「え・・・いや、うん、そうだよ。ありがとう」
秋勾はべたべたなケータイを受け取ると、多少の嫌悪感を感じながらポケットにしまった。手はワイシャツで拭いた。
「・・・汚い」
「・・・え!?」
つい最近聞いた言葉にデジャヴを感じる秋勾。少女はずいと身を乗り出したと思ったら、右手を秋勾のおでこにびっ、と伸ばした。
どんな思考が働いたのか、秋勾は、チョップされる!と身を強張らせた。・・・もちろん、ていうかいきなりチョップする訳がない。
最初のコメントを投稿しよう!