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そして、少女が我慢の限界で叫ぶのと、秋勾たちの真横の木々がバキバキと音を立てて、まるで木の枝のように簡単に折れて倒れていったのはほほ同時だった。
「な、なに!?」
「ちッ・・・タイミングの悪い・・・」
ぶち折れた木々と砂ぼこりで見えなかった『それ』も、段々とその巨躯を現しつつあった。『それ』は振り下ろした自分の背よりももっと巨大なこん棒を肩に担ぎ直す。・・・その風圧で、砂ぼこりは全て払われた。
「なに・・・これ・・・」
「鬼」
「はい!?」
「だから鬼だっつってんでしょ。何度も言わせないで」
秋勾はその馬鹿でかい鬼を見上げた。牛のような頭には、牛とは違うまがまがしい黒い角が二本。しかしその体はボディービルダーよりもマッチョな人型のものだった。
黒いボロ布を纏った牛頭の鬼は、同じくらい黒い焔の吐息を吐きながら、なんと口をきいたのである。
「ドコノ聖人君子カト思エバ、タダノ人間デハナイカ」
「・・・何なの、何のつもりなのあんた。取って喰おうってつもりなら止めた方がいいわよ。こいつの身体『死印憑き』だから」
平然と鬼と会話する少女。これはすごい絵だ。
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