天気雨の別称Ⅱ

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 いつまで続いていたかはわからないが、結構長い時間、そうしていただろう。・・・だが、終わりはあの封印の時と同じ、詠唱には反比例する酷く地味で簡素なものだった。  「・・・結。・・・動いていいわよ」  終わった後の少女の声が、先程よりもひどく優しい口調だったので、驚いて少女を見ると、今までとは打って変わって柔らかな笑顔を浮かべていた。  今までのギャップも兼ねて、その笑顔はとても綺麗に見えた。・・・だから、そんな女の子の表情なんて見慣れていない秋勾は、ドギマギして視線を逸らしてしまった。  「・・・どうしたのよ。・・・あ、来た」  何がきたのか、と秋勾が問う前に、肩にぽつりと落ちてきた。理解する前に、ぽつぽつと連続で当たって来て、それでようやく理解出来た。  「・・・え?雨?・・・でも、晴れてるのに・・・?」  確かに雲は頭上にあったが、日はサンサンと射したままだった。秋勾が不思議がっていると、少女がもっと不思議そうに秋勾の疑問に答えた。  「え?・・・まさか、天気雨知らないの、あんた」  「えーと・・・うん」  「へぇ~・・・確かに最近はなかったからな・・・天気雨。・・・あ、そだ」
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