女の戦いⅠ

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 「ただいまーっ」  そう言って優梨が帰ってきたのと、お湯が沸いた時は調度ぴったしだった。秋勾は、おかえり~、と返事しながらティーカップにお湯を煎れる。・・・そして、優梨が玄関から居間に入ったのと、秋勾が台所から居間に戻ったのと、調度どんぴしゃだった。  ・・・優梨は、秋勾の手に持つ二つのティーカップを、知ってか知らずか・・・知らないのだが、目ざとく見つけたのだった。  「あ、お兄ちゃん、それ私の?」  「ごめん、違うけど・・・いいや、僕の分あげる。はい、おつかれ」  「? ありがとう。・・・じゃあそれ誰の分?」  「これ?・・・昏の分」  「・・・こん?」  優梨の脳内データベースでその名を検索するが、一件もヒットしない。範囲を広げて、適当な動物もあげてみるが、思い付かない。・・・というか、動物相手にわざわざ紅茶出さないでしょ、という結論に至った。  ・・・じゃあ、それ、誰?優梨の疑念の雲がもくもくと立ち上る。ついでにもし相手が・・・だったら、という嫉妬と殺意もちょっとだけ。これでは秋勾もオチオチ彼女欲しいとか言ってられないのである。  ・・・その頃秋勾は、冷たい嫌な汗をかいていた。
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