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僕の妻です、何て言ったら、相打ちになってでも殺しにかかるだろう。秋勾はもうガタガタブルブルする他なかった。
・・・優梨は、秋勾がもう何も話さないとわかると、ゆっくりと秋勾のそばを通り過ぎ、何かをがさごそと漁り始めた。
「お兄ちゃぁん」
秋勾はびくっと体を震わせ、ゆっくりと振り返る。・・・そこには、やっぱり包丁を持った優梨がいた。なぜか微笑しているのが怖い。
「それだぁれぇ?」
わざと包丁をちらつかせながら、一言一言に力を込めて言う優梨。もう秋勾は小動物のように縮こまり、部屋の端っこでガタブル震え上がっていた。もう喋ることも敵わない。
「ふぅん?・・・だったらいいや、私が自分で確かめに行くから」
優梨は居間から出ていこうとする。・・・秋勾はなんとか最後の勇気を振り絞ってその前に立ち塞がった。よく頑張った、秋勾!
だが優梨には何の障害にもならない。彼女はニコリと笑い、
「どいてお兄ちゃん。そいつ、殺せない」
と一言。それで秋勾の勇気は繊細なガラス玉のように砕けちり、どうぞ、とそこを通した。優梨にとっての最大の障害は、禁断の恋のみである。
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