長い時間。

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 男の子が帰った後、再びドアが開き先頭の人が中へと招かれた。席が空いたので全員で詰めて座る。  人数が多いので大移動だ。 「あの子、よかったですね! ……本当によかった」  女性は笑顔を咲かせた。 「あの、お名前は……あ、ごめんなさい、私から言うのが礼儀ですね、私はカナコです」 「カナコさんか、いい名前ですね、私なんか在来りですよ、太郎と言います」 「あはは、可愛い名前ですね、おじさま!」  カナコさんは私の名前を可愛いと言う。  可愛いと言われたのは生まれて初めての経験だった。 「可愛いですか?」 「はい! 可愛いです! ……それにしてもまだまだ順番が来ませんよね?」  その考えを持つ者はまだ大勢いる、帰りは夜中になるかもな。 「おじさまはどんな仕事してたんですか?」 「うん? 私はね、鉄鋼業関係の会社でね、部長なんだよ」 「あは、部長もう一件行きましょ! って感じですか?」  酔っ払いのふりをして体を揺すっている。その行為が可愛らしい。  なんだか私の娘にそっくりだ。 「あはは! うまいね、似てるよ、あははははは!」  声の反響に応えたのかまたドアが開く。中から出て来たのはもういい年のおばあさんだ。
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