サクラ、チル

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その日、天気はどんよりと雲っていた……最期のフライトにしては、最悪の天気だ。 しかし、時は待ってはくれない。護るべき御身(オカタ)がある限り、護るべき御国がある限り、彼等は空を舞い続ける。 一人の男がまた、御国の為と見送られ空へと舞い上がった。 「……紀子(ノリコ)…」 彼はゼロ戦の中でソケット片手にそう呟いた。 「俺は……まだ…」 (幸一朗様…私、あなた様のことをお待ち申し上げております。) やり残したことがある… 最期、愛する女性(ヒト)が脳裏に浮かんだ。 キィィィィ…ン 「まだ…死ねない」
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