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今度こそ帰り道。帰るのがずいぶん遅れてしまったので、夕暮れ道は既に夜の様相に移り変わりつつある。
「あのゲームソフト、それ一本しかなかった?」
「いや、わかんない。これしか見てなかったからな……」
「ちぇっ……なんか気になるな、俺も買っときゃよかったかなー……」
装丁は地味だが、なにぶん興味を引くには十分な不思議さを秘めたゲームだ。家につく頃にはだんだんと俊也も欲しくなってきたらしい。先ほどからずっと「終わったら貸してくれよ」などと銀に言っている。
「もう家か……じゃ、また明日な!終わったら貸せよ!」
この道だと、俊也は銀よりも早く家に着く。
銀との別れ際にも、しっかり要求をしていく抜け目なさが彼らしい。
「金出せよ」
「げ……勘弁してくれ」
だが銀の方も、悪戯っぽくニヤっとしながらこう返しておくことで、牽制を掛ける。
昔から変わらず繰り返されてきた、親友だからこその冗談。彼らの在り方のスタイルだった。
「ふぅ……さ、俺も帰るかな……」
そんなやりとりも終わり、ここからは一人きりの帰路だ。
結局、家に着いたのは完全に日が沈んでからであった。
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