始まりの種

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ようやく掃除を終わらせた二人は、急ぎ足で商店街のゲームショップへと向かう。急げば間に合うはず、そんな期待を持っていれば自然に早足にもなるというものだ。 そして歩く度、ベルトと一緒に腰元につけた、銀色の剣を模したキーホルダーが揺れる。 これはまだ銀が小さいときに、今は亡き祖父に貰ったものだ。特注品なのだろうか、大事なものだと言っていつも肌身離さず大事にしていた。 そして今、それは銀に受け継がれている。彼にとってこの銀色の剣は、いわば御守りのようなもの。だから銀はこの剣のキーホルダーを決して手放さないのだ。 (間に合え───っ!) 今や小走りになっている二人がようやく商店街につくと、周りの店になど全く目を向けずに目的のゲームショップに向かう。 《追加入荷・本格RPG『prideveil』!》 ゲームショップの前にはこのように書かれた看板が躍り、華を与えている。 「間に合ったか……?」 「急ぐぞ、銀!」 《ご好評につき完売致しました》 「…………」 だが二人を待っていたのは、店の入り口のガラス戸に貼ってある紙きれが示す、悲しいくらいに残酷でリアルな事実だけであった。
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