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濃霧の農村
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暗い空の下を、その者はひたすらに駆けていた。見た目は小さな子どもで、無邪気に遊びまわっているようにも見えた。
しかし、彼の背中には純白の羽根がある。人間ではなかった。
ここに来た目的は分かっている。自分だけでなく仲間たちにも同等に課された、修行の一環だ。
でも、何故こんな所を選んだのだろうか。もっと落ち着いた場所があったろうに、わざわざ未だ『創世の混沌』の落ち着かない場所を選んだ理由が分からない。
あの人は偉大だけど、何を考えているのかは全く分からない。不思議な人だ。
羽根を持つそのものは、彼の言う『創世の混沌』に溢れた空を見上げ、まだ駆けていく。
彼はまだ知らない。その先に待っている、一つの出会いを。走るその先にいる、一人の戦士の存在を。
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