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港途の山道
***
自分は強かった。
立ち向かってくる者とあらば、魔物であろうと人間であろうと容赦なく倒し、ひたすらに暗い空を翔んだ。
人間を殺すなと、盟友には何度も言われていた。しかし、必要が迫れば殺すことも躊躇わなかった。
力を貸し与え、知恵を授け、剣を並べる盟友のために戦った。
全ては盟友との誓いを果たすために。純白の翼を持つ少年は、自分が優れた存在であるが故に、その力に酔っていた。
今いる“この地”の者たちに助力することを、彼は認められていなかった。
本来彼はこの世界を知見し、放埓するだけの存在で終わらなければならなかった。
しかし彼は、力を持つが故に己の課せられた役割を忘れ、本能の欲するままの行動を優先していた。
元々は、ほんの些細な楽しみとして交わしたはずの約束は、今や彼の歯止めを取り払ってしまう禁断の合鍵でしかなかった。
だから、偉大なる者は決意した。
彼から知力を、能力を、絆を、時を。全てを奪い、白紙から作り直すと。
そうして、彼は封じられた。
偉大なる者の助力によって人間が作り出した禁断の魔法。その反動に、時を代償に、力を過信した少年は姿を消した。
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