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私の頭の中に記憶が鮮明に蘇る。あの怖い、でもほっとする記憶。2年前の怪奇現象。
前車両にいたのはあの血濡れた兎だった。
「莉禍」あ、あれって…
私はすぐにドアを閉めた。
「美夜」うん…。でも何かの間違いかもしれな!!?
ドアが兎によって開かれた。
「莉禍」きゃあぁ!!
莉禍が異常なほどの奇声をあげる。
「兎」許さない…
兎が私に右手を伸ばす。私はその手をそっと包むように両手で握る。
「美夜」お父さん…だよね…?どうしてこんな事するの?
私は泣きそうな声で問いた。
「兎」許さない…。
兎が握っていた私の手をほどき、すっと首へ持っていく。
「莉禍」美夜!!
「美夜」うぐぅ……
兎の手に力がじょじょにこもる。
「莉禍」美夜のお父さんだからって何してもいいってわけじゃないんだから!!!
莉禍は兎にバックキックをかます。それは兎の腹に直撃して前車両に戻され、私の首を締めていた手が離れ、私は電車の椅子に投げたされた。
「莉禍」今のうちに早く!!
莉禍が私の手を取り後部車両へて走る。
「莉禍」ハァハァ…もう…いいかな…?
莉禍は私を連れて最後尾の車両まで来た。
「美夜」……お父さん
私はぼそりと呟いた。莉禍は私の気持ちをさっしたのか肩にぽんと手を置いて大丈夫と言ってくれた。
「莉禍」あれ………?
莉禍が急にあたりを見渡し始めた。
「美夜」どうしたの?と私が聞くと莉禍が携帯を開き話し始めた。
「莉禍」今…7:30だよ…?
莉禍の言っている事に少し戸惑ったが、すぐにその意味に気がついた。
「美夜」そう言えば駅に着かない……
言葉のとおり前の駅から20分以上たっているのに次の駅着かないのだ。
不安が頭を過ぎる。
「兎」ゆ…許さない…
前車両から兎の声と足音が響く。
「莉禍」ど、どうしよう…
莉禍が不安そうに私を見る。
兎の足音が少しづつ近付いてくる。
「美夜」大丈夫…大丈夫だよ
その瞬間前車両のドアが勢いよく開け放たれた。
「美夜・莉禍」!!?
兎の目からは血の涙が滴り落ちていた。
そのあと兎は私達になにもせず、すぅっと姿を消していった。
「放送」間もなくー、○□△駅御降りのさいは―――――
放送が聞こえてきたせいで緊張の糸が切れ、床に座りこむ私達。
「美夜」……………
そのあと私達は黙りこんだまま駅を出た。
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