旅のはじまり

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旅のはじまり

私は金魚の糞よろしく うしろからついて回った 散歩に行くだの釣りに行くだの 彼は一人で行きたいと思っていたに違いないが 私はそれを許さなかった 何故? いやいや 少しでも一緒に居たいと思ってどこが悪い? 露骨に嫌な顔をする彼を尻目に『やだ、行く』と連呼する私 『仕方ないなぁ』としぶしぶ言う 扱いが酷いとは思うがそんな彼の事が 私は大好きだ 無理を承知に合意してくれる わがままな私を側に置いてくれる それだけで幸せだと思うが 幸せを感じると それ以上の幸せを求める ひたすらそれを繰り返す それが人なんだと思う 私は彼と上手く歩幅を合わせて 付き合っていこう ゆっくりで良いから これからも頑張っていこう 密かにそう決意していた ある日、彼と一緒に過ごす日が 減っていった なにやらバイトを増やしたらしい 何か欲しいものでもあるのかと 尋ねてみたが教えてくれない 私がしつこく聞いても 『何でもない』としか答えてくれなかった 彼は学校に行かず働いた 不登校気味の彼を私が支えてやらなければ 単純な私は一人で奮闘していた なるべく邪魔にならないよう 陰で支えてあげよう 一方働きまくりの彼は彼で どんなに忙しくても私と居る時間だけは 取ってくれた その時間は私にとって 最高の時間 少しでも私と一緒に過ごしてくれる だから私は彼の事をこれからもずっと 好きでいられる 些細な事で喧嘩しても ごねても好きでいられる
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