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ユウキさんの事をさん付けて呼ぶと
すぐ怒る
『さんはいらんわ』って感じで
慣れない私は少し戸惑う
ところで…他の仕事は大丈夫なのかな?
私のバイクばっか見てるけど
『ダチはダチでいの一番で客はその次、ユキの場合はダチであり客だから今やってんの、何か問題あるか?』
いや…特に…
どうやら私は知り合いからダチに昇格したらしい
『あっ!』
突然何かを思い出したかの様に声を出し
慌て始めるユウキさん
一体何が起きたのだ?
『ちょっと行ってくるわ、待っとって』
そう言い残すと外へと出ていく
何がなんだか解らずまた取り残された私
数分後、1台のバイクが工場の前に停まり
いかついオヤジがこちらへと向かって来る
少しビビった私は思わず身構える
『すまんな、今ユウキのヤツ用事で出てっとるから替わりにワシが見ちゃる』
と言いつかつかとバイクに近く
ん?この人は社長?本当に?
『あら、こりゃあかんわ…でもちゃんと直すから安心せな』
あ…どうもすみませんです…
会話が続かない…
カチャカチャ部品をいじる社長
『すまんね~客も知り合いも大事やけどな、もっと大事なもんがあるやろ?』
へっ?何がですか?
バイクをいじりながら
『ココもあかんわ…ココも』
疑問だけを私に残したまま今度は黙々と作業に入る
私はその作業を黙って見つめていた
『しゃちょー』
突然後ろから幼い声が工場を突抜た
『おっ、帰って来たわ』
作業を止め社長は振り返った
私の横を風の様に抜け
社長に飛び付く小さな女の子
『ちさ、社長ばっちぃから離れ』
ユウキさんが後ろから現れ言い放つ…
ちょ…子供ですか?
『居たら悪いんか?』
今23でしょ?この子4~5歳…
『5歳!』
と小さな掌を見せつけながら女の子は言った
わぉ…18で?私と同い年で子供?
すげーなぁ
…そう言うことか
社長がさっき言った
『客より知り合いより大事なもの』
家族の事だったんだ
『誰だって家族は大事やろ?』
小さな女の子を抱きながら社長は笑っていた
その笑顔が幸せに満ちた顔だった
私もその笑顔に釣られ笑っていた
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