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男は無言で三人を見下ろしていた。彼は『証』を見せない彼等に眉をひそめた。
男:「…『証』だ。お前等…『トランプ』は無いのか」
オッドとクロスは念のため、遺体から抜き取っていたトランプを掲げ、閖雅は自分のトランプを見せた。
男:「…新顔か?まぁ…どうでもいい…入れ。もうすぐ、『競り』が始まるぞ」
三人:「???」
三人は怪しまれるといけないので、とりあえず、中に入った。
一一ギィシャーッ
三人:「!!?」
扉を閉めると、内のざわめきが聞こえた。彼等は男と別れ、一本になった道を進んでいった。やがて、広い空間に行き着くとその光景に我が目を疑った。
そこには異様な光景が広がっていた。空間の中心部には広場があったが、水の都とは全く別物だった。ここには果物や野菜が売られてはいなかった。それの代わりに、黒くて大きな檻(おり)が数多く置かれてあった。
人々はその檻を囲むように何やら『競り』をしているようだった。檻の中を見るとそこには召喚獣にもなれる『魔物』が入っていた。
閖雅:「な…」
クロスは咄嗟に閖雅の耳を塞いだ。魔物の悲鳴が辺りに響いていた。オッドは唇を噛み締めて見ていた。
クロス:「これが…地の島の『本性』か」
地の島の住人が『侵入者』をことごとく手に掛ける理由はこれにあった地の島は『要塞』と呼ばれていたが、彼等は『召喚獣になる前魔物』の闇市をひそかに開いていただけだった。
魔物を捕獲して高値で売買して、あわよくば自分達で召喚獣にすることが出来れば部下等、不必要になるからだ。
クロスは閖雅とオッドを連れてこの空間に宿が無いかを探した。
一一宿
闇市を利用する客が使用するための宿の部屋に着くと閖前はベッドに俯せで倒れ込んだ。
オッドは半分だけとはいえ、魔物の血を受け継いでいたので、競りの対象になっている彼等の気持ちが読み取れた。言葉が解る閖雅の『痛み』はそれ以上だった。
クロスは閖雅とオッドに何て声をかけて良いのか分からなかった。
クロス:「ユー君…」
彼はうつ伏せになる閖雅の隣に腰を下ろした。
閖雅:「…これが、この世界の本当の顔なの?」
閖雅はクロスを見ないで言った。
クロスは前髪をかき上げた。
クロス:「…長年、俺も旅をしたが…地の島があんな事をしているのは知らなかったよ」
閖雅:「………」
閖雅はクロスの言葉が信じられなかった。それだけ、魔物の言葉は彼にとってつらいものだった。
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