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閖雅は彼等の叫びを直に受け取ったので心が張り裂けそうだった。
一一助けてくれ!
一一私たちがあなた達に何かしたの?!
一一お願いだ、此処から出してくれ!
一一あたしには…子供がいるのよ!無事に逃げ切れたのかしらっ?
一一嫌だよ…ママ~!
閖雅:「………」
つぅー…
閖雅は俯せになったまま、無言で涙を流していた。彼等は人間に言葉が届かない。ここの人間は彼等をモノとしか思っていない。
オッドはグッと拳を握りしめた。
苦しむ閖雅とオッドを見て、クロスは決意をする。
クロス:「…俺達の手で、彼等を救おう」
閖雅:「!!?、クロスさん…」
閖雅は涙ぐんだ顔のまま、オッドはハッとしてクロスを見ていた。クロスは哀しそうに笑った。
クロス:「俺はともかく、君達を『大罪者』にさせたくはない…だから…ここは俺だけでどうにかする。…だから手を出すなよ?」
閖雅は涙を拭ってオッドと頷きあった。
閖雅:「僕も彼等を救いたい!」
オッド:「…変態にカッコイイとこばっかり、持って行かれても困るからな!」
クロス:「……ユー君、オッド…」
クロスは目を大きくして深呼吸をしてから微笑んだ。
クロス:「…オッド、変態は余計よ」
それから三人は緻密(ちみつ)な計画と手順を考えた。閖雅だけ先に広場の調べにいった。クロスが行くと言ったが、地属性の魔法を扱うことが出来ない彼を行かせる事が出来なかった。
一一広場
檻(おり)の周りには大人がたくさんいた。えぐれたようにその広場の壁から幾数の道があった。そこから子供達が広場を見つめていた。
男:「おい、此処は子供が来るとこじゃないぞ!」
閖雅の肩を掴み振り向かせた。彼は男を見た。
閖雅:「僕、こう見えても二十一なんだ。幼く見られていつも困るんだよな。…それでもまだ、疑うの?」
閖雅は男を睨む。
男:「………」
男は目を細めた。確かに閖雅は幼く見えるが、彼の持つ雰囲気に男が納得した。
男:「な~んだ。同業者か」
閖雅:「で、今日は何が目玉なの?僕…遅れちゃってさ」
男は檻を見回した。
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