第二章

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ゾクッッ 閖雅:「い、嫌だっ…」 オッドの殺気を帯びた気配に充てられた閖雅(ゆりまさ)は自分で自分を抱きしめ、その場にうずくまった。 オッドは何処からか素早く出した赤い背表紙のトランプの絵柄の方に軽くキスをして、絵柄を敵に向けた。 一一ゴオォォッ 彼の周りを強い風が取り囲む。その中心でオッドは叫んだ。 オッド:「燃え盛れ、『龍神の息吹(いぶき)』!」 一一ボォオオオッ 閖雅/敵:「!!!!!!!」 すると、叫んだ口から火炎放射機で放つような威力の炎が放出した。 敵:「うぎゃああああっ」 一一ジュウゥゥ 嫌な臭いと男達の断末魔がジャンモの森に響き渡った。 離れていたとはいえ、この命中率や残虐さはついさっき話していた閖雅には信じられない光景だった。 オッドの瞳は炎の様に揺らめく輝きがギラギラとあった。それをこの状況の中でもしっかりと閖雅は見ていた。 オッド:「あっちゃ~。…久しぶりの炎だったから…火加減がうまくいかないねぇな」 一一ゴオォォッ 暢気(のんき)にそんな事を言っている間に、ジャンモの森は山火事のように木々を燃やしていった。 オッドは閖雅を見て叫んだ。 オッド:「おーい!お前って水属性だろ?この炎を鎮火できねぇのか?」 閖雅:「!!」 ビクッ 普段の見慣れたオッドに戻ったとはいえ、悍(おぞ)ましいものを見た後には自然な態度だった。 閖雅は思わず彼に対して怯えてしまった。それを見たオッドは悲しげな眼差しをした。 ドクン ドクン…ドクン… 閖雅:「ぇ…?」 その時、閖雅のトランプが脈を打った…ような気がした彼は、青い背表紙のトランプを胸の内ポケットから出した。 閖雅:「!」 表紙を見た閖雅は我が目を疑った。無地だったそこには、オッドのモノと同じように文字と絵柄があった。文字は閖雅自身が読めるものだった。 閖雅:「………」 彼の周りを風が覆い、自然とその言葉が頭の中に浮かんで叫んだ。 閖雅:「我は汝を信じ、汝は我を信じる…『白蛇舞踊(はくのまい)』」 閖雅はオッドとは対照的に静かな唱え方だった。image=188450421.jpg
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