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一一ドクン…
ドクン…ドクン
逃げていたバイヤーが妙に殺気を放つ閖雅を見つける。閖雅の正体がバイヤーにばれそうになりかけた時だった。
ぴょんぴょん
閖雅:「…ん?」
クロスのかまいたち(召喚獣)で逃げ出すことに成功したのか、バイヤーに捕まらないように必死で逃げるあの、『茶色い兎』がいた。
兎は競りで高価な値段で取引されていたのでバイヤー達は何がなんでもそいつだけは咽から手が出るほど欲しかった。
一一ギシャーッ
広場では『地獄絵図』のような惨劇が巻き起こっていた。魔物は人間を魔法で殲滅したり、補食したり、怒りを向けられた人間は逃げることしか出来なかった。
それを見て、閖雅は自分が抱いた感情を圧し殺した。彼は考えを思い直し、新たな気持ちで叫んだ。
閖雅:「お願い…ハク、みんなを、冷静に戻して。これじゃ…ダメだよ!『ハク、召喚』!」
一一ピカァッ
ハクは光り輝きながら金と白のトランプから飛び出してきた。
ハク:「任せろ。全てはユリマサの為に」
一一シャーッ
彼は広場の中を駆け巡った後に、天井に舞い上がった。
一一コォォ…
ハクの口に冷気が宿る。
ハク:「無駄な争いを止めろ。さもなくば…」
魔物達はハクの姿を見て息を呑んだ。人間達はハクを見て魔物が怯むのを見逃さなかった。その隙に逃げ出した。
ハクはそれに気付いた。
ハク:「愚(おろ)か者め…『静寂なる制裁(クイック・サンクション)』」
そう唱えると空気中にある水分が凍てつき、集合体になる。その固まった球状の物体をハクは放った。
一一カカカッッ
ヒュン…ズガガガッ
閖雅:「あ」
ハクが放とうとしていた魔法に危機を察した人間がその魔法に攻撃魔法を当てる。
ハクの放った魔法は人間の攻撃魔法で軌道が少しズレた。そのせいで唯一の出入口が塞がった。
叫び嘆くバイヤー達を見下ろしていた閖雅はしばらくほくそ笑んでいた。
そこに申し訳なさそうなハクが戻ってきた。
ハク:「すまぬ…」
閖雅:「オッドとクロスさん…無事に脱出、出来たかな?」
ハクは閖雅の冷たい眼差しに少しだけ驚いていたが、何も言わなかった。
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