第七章

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一一翌朝 ザァァー 閖雅:「雨かぁ…」 閖雅は雨の音で目を覚ました。入り口付近で壁に背もたれて外を眺めていると、のっそりとハクが近寄ってきた。 他の仲間はまだ眠っている。 ハク:「…今日は目覚めが早いな」 閖雅:「うん。…僕、こっちに来て初めての雨だからね…目が覚めちゃった」 ハク:「…そうなのか?」 閖雅は外を見ながら言うと、ハクはその横顔を見つめた。 閖雅:「今日は…此処に缶詰になるのかな?」 閖雅がそういうと、二人の話し声で起きたフォーカスが近づく。 フォーカス:「これぐらいの雨でしたら俺は飛べますよ…フフフ」 閖雅:「おはよう、フォーカス。…でも…僕達、濡れちゃうよ?」 フォーカスは笑った。 フォーカス:「そうですね。…この世界では濡れるのも旅の醍醐味というものですよ」 閖雅:「…醍醐味…うーん…そうなの…かな?」 閖雅が唸っていると、クロスが起きて来た。 クロス:「あれ?ユー君、早いね」 閖雅:「エヘヘ…懐かしい音で目が覚めちゃった」 クロス:「懐かしい音?」 閖雅は頷いた。 閖雅:「うん。雨は…此処に来て初めてだったからね」 クロスは頷いた。 クロス:「そうだったのね。今日は雨が降ってるけど飛ぶわよ。覚悟なさいな」 閖雅は乗り気じゃなかったが、頷くしかなかった。 夜の疲れか、昨日の魔法の使いすぎか分からないがアースの目覚めが遅かった。それでもオッドよりも早かった。 オッド:「うぅ…くそぉ…」 火属性体質のオッドは半分魔物とはいえ、雨の日はだるさは最悪だった。 閖雅:「オッド…大丈夫?」 オッドは洞窟の奥で雨音が聞こえないように身を縮めていた。閖雅は彼の身を按じていた。 クロス:「…はぁ…仕方ないわね」 クロスはオッドを見てため息を吐いた。 クロス:「アナタ…ご両親に…雨の日の凌ぎ方を習わなかったの?」 ジャンモの森では雨があまり降らなかった。降ったときは洞窟の中や木の下で震えていたのを、オッドは思い出す。 オッド:「ば、バカヤロー!、親父が雨の中…くるかよ。母さんも人間だから雨の日は普通だしよ」 クロスは呆れながら彼はオッドの額に手を当てた。 クロス:「『非属性耐久(エンドランスコート)』」 薄いピンクの膜にオッドは全身、包まれた。 するとオッドの表情が変わった。
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