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朝食を食べ終えた二人は、その場を早々に出発した。しばらく歩き続けていると、閖雅(ゆりまさ)の鼻に懐かしい香りがしていた。
閖雅:「(…これは…潮風の…香り?)」
一一浜辺
白い砂にエメラルドグリーンの水面。遠くに行くほど鮮やかな青色に染まった。閖雅は南国にいるような居心地だった。
オッドはそんな彼を他所(よそ)に、そわそわしだした。
閖雅:「…どうしたの?」
どきぃっ
びくんと身体を震わせたオッドは申し訳なさそうに言った。
オッド:「ごめん…どうしよう。これから先は…どうしたら良いか分からないんだ」
頭を掻きながらそう言うと閖雅は笑った。
閖雅:「そんな事を気にしてたの?僕はあまり気にしてないよ。だって君は、この島から出たことは無いんだろ?」
オッド:「お、おぅ」
閖//オッド:「う~ん…」
二人は唸(うな)っていた。
閖雅は日本で見た映画やドラマ、テレビ番組、あらゆる情報源から今の状況に役に立つモノを考えた。そして、それを思いついた。
バッ、バッ、バッ…
オッドは彼に言われた通りにしたが、結果は出なかった。
オッド:「…この『テバタシンゴウ』って意味あんのか?」
閖雅:「分かんないよ」
木の棒に二人の上着を付けたものをオッドが閖雅に習った手旗信号を真剣にしていた。閖雅も手旗信号のサインのやり方を知らなかったが、とりあえず、振らせてみた。
結果が出る前に、この島の前を通過する船舶や召喚獣の姿が見えなかった。
閖雅:「ねぇ…もぅ、止めたら?」
オッド:「キュエーキュエー 」
おかしな声が砂浜に響いた。それはこの島特有の鳥で、地球で言う烏(からす)の役割を担っていた。オッドは意地で声真似をしながら手旗信号を続けていた。
オッド:「うぬぬ…ユリの案は中々良かった筈なんだけど…」
閖雅:「その前に、船や人が居なさすぎだよっ!!」
それを聞いたオッドは「あ、しまった」と慌てて困った顔をしていた。
オッド:「あー…そういや…この島、ジャンモの森は俺と海流で人が寄り付かないんだった!」
閖雅:「!!!?、はぁっ?!」
閖雅の声が辺りに響く。
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