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カランカラン
オッドはノリノリで木の枝を拾った末に、閖雅(ゆりまさ)が想像した以上の枝が集まった。
閖雅:「(懐かしいな…キャンプファイアを思い出す)」
オッド:「~♪」
オッドは火の制御の不安に対して、特に何も考えていなかった。彼は魔法が使えることが嬉しくて堪らなかった。
軽くストレッチを行うオッドは、ぽきっと腕を鳴らすと閖雅に言った。
オッド:「危なねぇから、少し離れてな」
閖雅:「うん」
彼はオッドの背後に回り、ジャンモの森の木の影に身を潜めた。閖雅は念のために青いトランプが素早く出せるように手を構えていた。
ドクン…
嵐の前の静けさのように、オッドは目をつむって精神統一を行(おこな)った。彼の緊張感が閖雅にも空気から伝わってきた。
閖雅:「………」
一一ゴオォォ…
辺りの風がオッドを包む。
ドクン…
襲撃者達に見せた荒々しい殺気を放つのではなく、猛々しい波動が彼から醸(かも)し出ていた。
オッドは意を決めて目を開けた。
鮮やかな緑色が、髪の色や本物の火の色に負けないぐらいの赤い光が灯った。
彼はポケットからトランプを抜き取った。それは襲撃者に向けた魔法とは別のモノだった。
オッドは頬に笑みを浮かべ胸を張り、それを左手の人差し指と中指でつまみ叫んだ。
オッド:「俺の十八番、『龍神の嚔み(ドラゴン・スニーズ)』」
…ボォッ
それは口から炎を一瞬だけ出すものだったが、威力は凄まじいものだった。木の枝に触れるやいなや、瞬(またた)く間に火柱が上がった。
一一メラメラッ
オッド:「ユリ~どうだ、見たか!…俺の実力を!」
閖雅は胸を張るオッドに笑顔を向けていた。火の側に寄ると、不思議なぐらい熱くなかった。
閖雅:「あれ…この炎…熱くないの?」
オッドは頷いた。
オッド:「ああ。だってくしゃみだぜ?熱かったら龍神もうかうかくしゃみは出来ないぞ?」
閖雅はそんな暢気な事を言ったわけではなかったが、成功したオッドを讃(たた)えていた。
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