プロローグ

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『閖雅がこの手紙を読んでいるという事は、私は世界から居なくなってしまったのね。…ここに書かれている内容をお母さんには言っちゃ駄目よ。あの人は…心配症だから。私は私で頑張るから、貴方は自分の運命を突き進みなさい。例えそれが、貴方や私が望んではいないものだとしても。…一緒に入っていたそのトランプは私と思って、肌身離さずに持ってなさい。』 一一カサッ 一枚目が終わり、二枚目に移った。 『私は"選ばれた"。前からずっとその予兆があったの。誰に何に選ばれたなんて貴方には言えないの、ごめんね。…貴方にはお母さんを守ってほしいと思ってる。でも、私の事が本当に恋しくなったときに同じ場所に来れるように道標を残しておきます。』 『私が移動した方法をここに記しておきます。これを行えば、貴方はおそらく私の元に来れるでしょう。しかし、私のところに来るという事は…分かってるわね?私がした時のようにお母さんを哀しませるという事を。』 閖雅:「………」 自然と閖雅の便箋を持つ手の力がグッと強くなる。 道標の方法に書かれていた日付を見て愕然(がくぜん)とした。 閖雅:「居なくなったのは去年の今だから日付は…今日じゃないか!」 『日付は私が消えた日、時間は"夜中の11:59"。場所は玄関の"名も無き木"。そしてこれが最も大切なもの。それは…"満月"よ。月明かりがその木を照らす時、トランプを胸に当てて"我、汝を信ずる"と唱えよ。』 そこで手紙が終わっていた。彼の決心はその手紙が見つかった時から決まっていた。 閖雅:「あとは…天気の確認だ!…って、今日は夕方から雨って予報じゃなかったっけ?!」 バタバタバタバタ 姉の法事中なのを忘れて階段を駆け降りた。視線が彼の身体に突き刺さるが気にはしない。 今の彼には新聞の天気予報の欄を見るのが目的だった。閖雅は内ポケットには青いトランプをしまわれていた。 『夕方から明日に掛けては、曇りか雨でしょう』 調べようとして新聞紙を開いたとき、人の気も知らずに脳裏にテレビの天気予報が明るい音楽が流れていたが、彼にとっては青天の霹靂だった。 閖雅:「そんなっ!」 一人で騒がしい彼を心配して母親が様子を見に来た。 テレビにくぎづけになったり、何やら頭を抱えていた息子を見てため息を吐いていた。 彼女には息子が狂ってしまったかのように見えて声が掛けづらかった。
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