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一一夜
閖雅:「一一よし」
法事も終わり、母は親戚の相手をしている。隙をついて彼は外に出た。
何が起こっても良いように動きやすい格好で木の前に立っていたが、彼の手にはそれ以外の荷物はない。
切羽詰まっていたので、何が必要か考える時間はなかった。
かちっかちっかちっ
閖雅は空を仰ぐ。
仰いだ空には月が見えない曇り空だった。少し前には雨が降っていたので、彼は心配だった。
8…7…6…5…4…3…2…1
一一カチッ
時計の針がその時間を刻むと…
キラッ…パアァァ
閖雅:「!!!」
時間になると、たちまち雲が月を見せつけるようにカパッとかきわけたように出て来た。
閖雅:「『我、汝を信ずる』!」
シュワワワッ…キュイッ
閖雅:「!!?」
唱えると、瞬時に辺りがぼやけて来たかと思うと、その木に吸い込まれるようなワープ感覚に襲われた。
彼はてっきり、月に吸い込まれるかと予測していた。
閖雅:「うわあぁぁっ!?」
彼の悲鳴がこだまする。
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