第四話 追憶と幕開け

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 嫌な緊張感から、じっとりと手に汗をかき不意に携帯を取り落としそうになった。 「あのね、お姉ちゃんね。楓ちゃんから返事がなくてすごい心配したの。何通も何通も何通もメールしてるのに、何件も何件も何件も電話してるのに一度も返事は来なかった。ショックだったよ、愛してる人に無視されるのは。自殺も考えたよ。もし、楓ちゃんがあたしのことを嫌いになったのなら、楓ちゃんも殺してあたしも死のうと。でもね、生を簡単には捨てられなかった。せめて楓ちゃんの本心が聞きたかった。……嫌いなら嫌いって言って欲しかったよ」  抑揚なく語られる姉さんの言葉。背筋が凍るような感覚に捕われた。あんなにも明るい姉さんが、私の返事を返さないということで自殺を考えてしまうほど"楓"という存在は大きかったらしい。
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