第四話 追憶と幕開け

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「失礼します」  コンコン、と木製の扉が歯切れのいい音を立てた。 心持ち、緊張気味の私は服装を正してからそこに踏み入れた。 「お待ちしていましたよ、鳳園寺さん。そう緊張なさらないで」  立派な机に腰を据えていた優しそうな五、六十代の女性は表情を和らげ、首を傾げた。  今、ここは学院長室。  この学院でもトップにあたるその人に会うことなど、考えもしていなかった私が緊張をしないわけがない。先生に呼ばれることが、説教に結び付くと考えていた私には尚更だ。 「うんうん。顔付きもお母さんにそっくり。男の子なんて信じられないわね」 「あの……お話と言うのは……?」  自己紹介が終わり、つかの間の休息に入ろうとしたその時に、担任の小石原先生に呼び出され、これに至った私。  極力、早く済ませてしまおうと思うのは至極当然のことだと思う。 「あらあらまぁまぁ。そんなにおばさんと話すのはいやかしらね。当然ね。教室に帰れば、ピチピチの女の子が盛り沢山だし」
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