1634人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「失礼します」
コンコン、と木製の扉が歯切れのいい音を立てた。 心持ち、緊張気味の私は服装を正してからそこに踏み入れた。
「お待ちしていましたよ、鳳園寺さん。そう緊張なさらないで」
立派な机に腰を据えていた優しそうな五、六十代の女性は表情を和らげ、首を傾げた。
今、ここは学院長室。
この学院でもトップにあたるその人に会うことなど、考えもしていなかった私が緊張をしないわけがない。先生に呼ばれることが、説教に結び付くと考えていた私には尚更だ。
「うんうん。顔付きもお母さんにそっくり。男の子なんて信じられないわね」
「あの……お話と言うのは……?」
自己紹介が終わり、つかの間の休息に入ろうとしたその時に、担任の小石原先生に呼び出され、これに至った私。
極力、早く済ませてしまおうと思うのは至極当然のことだと思う。
「あらあらまぁまぁ。そんなにおばさんと話すのはいやかしらね。当然ね。教室に帰れば、ピチピチの女の子が盛り沢山だし」
最初のコメントを投稿しよう!