第四話 追憶と幕開け

4/47
1634人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
 今日、出会った人達の顔が次々と頭のなかを流れいく。無垢な顔で笑う人や内気そうな人。その人達が私が女ではないと知った瞬間、どんな反応をするのだろうか?  考えたくもない。  きっと、私は彼女たちに消えない傷をつけてしまうのだろう。  今日一日を過ごし、今は私の社会的立場よりもそちらの方が気になって仕方がなかった。  そんな私を傍目に院長先生はくすくす、と含み笑いを漏らす。  何がおかしいのか、と一瞬むっとした私。院長先生は穏やかな笑みを浮かべたまま、私の顔をじっと見つめた。 「そういうところは『お母さんそのもの』ね。まるで、昔に戻ったみたい」 「……あの、院長先生は母とどんな関係が……?」  この人が二十年ほど前も学院長という職務に就いていたとは思えないので、私はそっと訊ねる。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!