第四話 追憶と幕開け

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 院長先生は素っ頓狂な声をあげて、目を見開いたまま机に倒れる。  パチクリ、と目を泳がせたままむむむ、と唸り、 「どなたですか?」 「い、泉ハルカさんです」  神妙な顔付きで問う院長先生に私は恐れながら、おずおずと名を上げた。 「あらまぁ、ハルカさん? それなら安心。彼女はとってもとってもいい子だから」  その変化は早かった。数秒前までは大学受験を受ける受験生みたいに真剣な顔をしていたというのに、名を聞くなりけろっと態度は変わり、気さくなおばさんに早変わり。  どうやら、ハルカさんは院長先生に結構な信頼を得ているらしい。  あんなに意地悪なのに。 「それでも生徒一人じゃ頼りにならないと思わないかしら?」
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