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「は、はふぅ~」
妙な呼吸音を漏らしつつ、私はその人の耳に息を吹きかけた。
「……あっ……あん」
やたらとなまめかしい声を出してよろけた瞬間、ウナギのように身体をくねらせて、僅かに出来た隙間から抜け出すことに成功。
そう。ウナギの楓とは私のこと。……人に言われたことはないけど。
要領を得た私は有害無害、なりふり構わず、容赦なく身体を捩込んで、前へ前へと貪欲に前進していった。
思い出した。これは中学二年のバレンタインデー加えて姉さんに対して編み出した技だった。
「うなぁ!」
多大な苦労の末、やっとこ私は人だかりの中心へとたどり着いた。
「みるくちゃ~ん」
「その名前で呼ばないでくれるッ!!」
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