第四話 追憶と幕開け

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 でも、言われてみるとそうだ。私もこっちに来てから携帯の存在を忘れてた。おそらく、段ボールの中で静かで淋しい時を過ごしていることだろう。 「ゆかりちゃんも神社の娘なのに携帯とは……機械ってのは便利だからなぁ」 「なんだかハルカさん、すごく年寄りくさい。どうしちゃったの?」 「はぁ!? ピチピチの女子高生を捕まえて年寄りくさいって……怒りたいところだけどね。……なんか懐かしいのよ」  怒り笑いしていたハルカさんの顔が少し憂いを含んだ。  ぼんやり、と散り散りになってしまった桜の花びらをじっと見つめ、微かに微笑む。 「……懐かしいって何が?」 「教えない。知りたいなら自分で調べなさいよ!」
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