はじまり

5/6

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
      「…雨は、涙だよ」           彼は、掌を上に向けて、滴を受け止める   「涙…?」       彼の言葉を復唱する   「そう、涙」       呟いた彼が綺麗で、思わず傘を傾けた   綺麗過ぎて、見ていられない       すると、一呼吸おいて、彼は続けた       「…誰かの、涙」           気付いたときには、目の前に居た   近付いてくる気配に気付かなかった 視界に入り込んだ、彼の靴   ふと目をあげる       「…アンタの、涙」           ―雨に濡れた冷たい指で、そっと頬を撫でられた   優しくて、思わず、目を閉じる 頬を滑るその指の感触を、味わうために
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加