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「…雨は、涙だよ」
彼は、掌を上に向けて、滴を受け止める
「涙…?」
彼の言葉を復唱する
「そう、涙」
呟いた彼が綺麗で、思わず傘を傾けた
綺麗過ぎて、見ていられない
すると、一呼吸おいて、彼は続けた
「…誰かの、涙」
気付いたときには、目の前に居た
近付いてくる気配に気付かなかった
視界に入り込んだ、彼の靴
ふと目をあげる
「…アンタの、涙」
―雨に濡れた冷たい指で、そっと頬を撫でられた
優しくて、思わず、目を閉じる
頬を滑るその指の感触を、味わうために
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