0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「泣きたいときに、我慢をしては可哀相だよ」
優しい声
ゆっくり目を開いて、彼の顔を見上げた
少し、上にある目を見つめる
とても澄んだ目をしている
「…涙、出るかな」
「アンタが望むなら」
頬を撫でていた手が、頭の上に置かれた
ゆっくり、癒すように何度も前髪をくすぐる
時折、肩より少し下で揺れる髪を梳くように撫でられる
「………ケイ、」
「何?」
「有り難う」
―この日この瞬間、初めて、彼の名前を呼んだ
名前を呼ぶと、目尻を少しだけ細めて、口元に優しい笑みを浮かべていた
―涙が、溢れた
赦された気が、した
最初のコメントを投稿しよう!