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初めはお互いその存在を知っているだけの、ちっぽけな存在だった。
接点も持たず過ごしていくと思っていたあの日。
偶然通りかかった駅前で初めて話をして、そこから全てが変わっていった。
4人でいると全員が自分でいられた、作らなくてよくなった自分。
始まりは駅前のあの日だったかもしれない。
けれど動き出したのは、学校の屋上。
その全てが始まった屋上に千里はいた。
何年も一緒にいたわけではないのに、たった数ヶ月前のことが懐かしく思えて1人微笑んでいる。
「…不気味…」
「ちー、どうした?」
寒さに震えているのかなんなのか自身を抱きしめている珠姫と、覗き込んでくる万聖の声が重なった。
「んー、初めてここで話したこと思い出してた」
「年取ったか?」
「いや、珠姫、なんでそっちいく?」
不思議がる心矢は薄着な上に腕捲りをしている。
「うぅわ、心矢寒そう」
寒空の下その姿でいる心矢を見て、千里は怪訝な表情を浮かべた。
「さっきまで遊んでたから」
「遊んでた?部活じゃなくて?」
「今、テスト期間中」
実は現実逃避をしていた千里。
最近は万聖のことなどいろいろあり、ろくに勉強などしていなかった。
いつものことだと言ってしまえばそれでおしまいだが。
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