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「大丈夫だよ、また教えるから」
涙目になっている千里の頭を撫でながら、万聖は柔らかい笑みを向ける。
「ヤバいな千里、婚約して早々大問題だ」
「それを言うなぁ!」
「せいぜい婚約解消されないようにがんばんな」
楽しそうに笑いながら珠姫は軽い足取りで屋上から下りて行く。
それに続く、呆れため息をこぼす心矢。
この2人の関係はぜったいに何年も変わらないだろう。
後ろ姿を見てそう思えた。
「ちー、大丈夫だから」
「…ふぇぇ…」
「何もかも安心してていいんだよ」
柔らかい笑みを浮かべ涙を流す千里を抱きしめる。
茉美との婚約解消後、正式に千里との婚約が決まって、怒涛のように日々が過ぎていった。
長く感じた日々だったが、たったの1週間。
祖父を説得することが一番難攻するだろうと思っていたのだが、意外にもあっさりと許可を得たことに何かがやり切れない。
そんな思いもあったけれど、実は聖翔のことを後悔していたのだと知ると、少しは納得することもできた。
万聖に散々嫌みを言われ小さくなっている祖父を見た時は、孫に甘いただのじいさんに変わりないな…と千里は思ったけれど。
面食らっていたのは聖翔だったが、昔のことをどうこう言うつもりはないらしく、万聖の好きなようにさせろとだけ告げていた。
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