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そうなのである。
フラれたにも関わらず、元気に学校に来ているのを見れば、昨日何かあったとも思えない。
「空元気ってわけでもなさそうだ」
「あ~、うん。フラれるの慣れてるから、わりと普通だよ。みんな、あたしの性格知ると逃げてくんだよね。好きじゃなかったのかよって話。あ~、あたしも似たようなもんかぁ」
苦笑いを浮かべ再び空を見上げれば、澄み渡った空に吸い込まれそうになる。
腕を伸ばせば、手が届きそうな青。
伸ばした腕をキュッと握ってくる万聖は、もう片方の手で千里の目を覆う。
「カズ?何?」
「…泣けば?ここには俺達しかいないんだし」
「え、泣くって…あたし、昨日の元カレに未練も何も…」
先ほどの千里の行動が、万聖の目にはそう映ったのだろう。
泣くのを我慢しているように。
「…ふふ…」
そんな万聖の気遣いが嬉しくて、自然と笑いがこぼれた。
自然と笑えたのはいつぶりだろうか。
素でいられることが、何よりも嬉しかった。
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