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俺はケータイをいじろうとして、そういえば病院では使っちゃいけないことを思い出す。ケータイをポケットにしまい込んで欠伸をした。
坂木たちがくるのは昼過ぎだ。だから俺ものんびりと昼寝をすることにした。椅子にもたれて、目を閉じる。
目を開けると、能面が坂木たちと楽しそうに話していた。女子の何人かはまだ心配そうにしているが、能面は大丈夫だよ、と怪我のせいでぎこちない微笑みを浮かべていた。
「お、起きたねえ。おはよう」
能面はのんびりと俺を見つめてつぶやく。俺はおう、と言ってから欠伸をかました。
「おまえ寝不足?」
坂木が言って、俺は頷く。
「一晩中起きてたからな。…まあ、気付いたら寝てたんだけどさ」
「一晩中のんちゃんのとこにいたの?」
女子の一人が聞き、俺は再び頷いた。すると、坂木や女子たちがなぜかにやにやし始める。
「のんちゃんって、ほんと愛されてるよねー」
能面の親友が言い、坂木が悔しいけどなあとつぶやいた。能面は友人からもらった林檎をかじっている。俺や坂木に顔を向け、のんきに首を傾けた。
俺は軽く咳ばらいして、坂木や能面の親友を睨む。
「あんまり騒がしくするなよな」
「はいはい」
坂木はにやにや笑いをやめずに言い、俺の腕を掴んでひっぱってきた。
「ちょっと便所付き合ってくれよ」
「あ?ああ…」
坂木と俺は病室を出て、男子トイレに入る。用をたしながら、坂木は俺に言った。
「おれ…、のんちゃんが事故で病院運ばれたときさ、どうすりゃいいのかわかんなかった。おまえみたいにあの子のそばにずっと付き添うってことなんて思い付かなくて、オロオロしてるだけだったよ。なんか、おまえの行動ってあの子をホントに大事に思ってるなあって、なんか思ったんだよね。なんか、"想い"が違うっつーかさ」
坂木の淀みのある物言いに、俺は軽く首を傾げた。彼は天井を仰ぎながらつぶやく。
「おれっち…のんちゃん諦めるっす」
「そうかい、そりゃ結構」
「つーかさ、のんちゃんの親友いんじゃん?あの子にコクられちゃってさあ、困ってたとこだし」
「………。…まあ、別にいいけど」
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