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「ごめんなさい」
謝罪と共に、私の瞳からは涙が零れ落ちた。
「み、美和子」
突然泣き出した私に、和也は慌ててハンカチを取り出す。
アイロンがかかっていない皺くちゃのハンカチ。
「私駄目な奥さんだね」
仕事が忙しいのを理由に、私は主婦業を疎かにしていた。
結婚式の日、絶対いい奥さんなるからって、絶対誰もが羨む夫婦になろうねって約束したのに。
「俺こそごめん」
そう言って頭を下げる和也に、今度は私が慌てる。
「和也は悪くないよ」
「いや、プロポーズの時に美和子が仕事続けるの認めて、俺もサポートするって約束したのに、何の協力もしてやってなかった」
「それは私が何もしないから……」
「違う。俺が何も手伝わないから……」
「ううん。私が……」
「だから俺が……」
お互いムキになって自分が悪いと言い張る状況に、私は思わず泣きながら笑ってしまった。
つられて、和也も笑い出す。
「頑固なとこは変わんないな」
「和也こそ」
「冷めちまうに食うか」
「うん」
私達は再び不格好なコロッケを食べ始めた。
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