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「ご馳走様でした」
デザートも食べ終わり、私達は幸せいっぱいな気分になっていた。
「こちらこそ楽しい時間を有難うございました」
「凄い楽しかったぁ」
そう言って微笑む雨宮さんとれいかさん。
二人はやはり夫婦ということで、四人で話している時は互いのパートナー自慢や愚痴に花が咲いた。
「ほんと有難うございました。凄くいい店なので、又ここに来たいんですけど」
和也の言葉に、私も力強く頷く。
こんな素敵なお店なら、又二人で訪れたい。
しかし雨宮さんとれいかさんは、困った様な表情になる。
「お気持ちは嬉しいのですが、ここに来ることのできるお客様は〈大事なものを見失っている方〉だけなんです」
雨宮さんの言葉に、私と和也は顔を見合わせる。
大事なもの――確かに私達は夫婦でいられる幸せを見失っていた。
しかし、雨宮さんとれいかさんのお陰で、それを見付けることができた。
その二人に会う為には、幸せを見失わないといけない。
「じゃあ、残念ですけど、もうお会いすることはないですね。でも俺絶対に二人のことは忘れませんから」
一気に悲しい気持ちになる私とは反対に、和也は笑顔で右手を雨宮さんに差し出す。
もう会うことはない、つまりはもう幸せを見失ったりしないということ。
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