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「私達もお二人のことは忘れません」
雨宮さんも左手を差し出し、和也と握手を交わす。
「お幸せに」
そして、れいかさんも右手を私に差し出して微笑む。
もう会えないと思うと凄く寂しいが、私は涙を堪えて笑顔でれいかさんと握手を交わした。
次に、和也はれいかさんと握手を交わし、私は雨宮さんと握手を交わす。
そしていつの間にか足元には、私達をここに導いてくれた猫が二匹並んで私達を見上げていた。
「有難うね」
私はしゃがんで、二匹の頭を撫でる。
猫はそれに応える様に、気持ち良さそうに目を瞑りニャアと鳴く。
「猫ちゃんの名前何ていうんですか?」
「黒いのがユエで、白いのがルナです」
「素敵な名前ですね」
「有難うございます。ユエとルナは、うちの案内役なんです」
「へぇ。可愛らしい案内役ですね」
「二匹共、優秀な案内役です」
手入れの行き届いた毛並みは触り心地が良く、二匹が大事にされていることが伝わってくる。
「名残惜しいですが、そろそろ閉店の時刻となります」
暫く猫を撫でていたが、雨宮さんの言葉に手を止める。
時間を確認すると、後三分程で日付が変わるところだ。
そして雨宮さんとれいかさんを見上げると、二人共優しい笑顔で私を見下ろしていた。
その笑顔が、私の気持ちを更に切なくさせる。
「行くよ」
そんな私を気遣ってか、和也は微笑みながら優しく私の頭を撫でる。
私は小さく頷き、ゆっくりと立ち上がった。
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