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ある夜、僕は不思議な感覚で目が冷めた。
自分が、世界がパズルのピースになったような。
パラパラと有ったはずの病室の壁が、床が、消えていく。
その後には本当の空虚が、有る。真っ白な境界無き広大な場所が、有る。
変な話だが恐怖は全く感じなかった。
崩れていく世界の中、傍らの窓ガラスを見つめた。
写りこむ、僕じゃない姿。
華奢で可愛らしい、少女。
やあ、よく頑張ったね。
「貴方のお陰。退屈で虚しさで狂いそうになって、そうして私はお友達が欲しいと思ったの」
うん。知ってる。
「私が死んだら、貴方も消えるのかしら?」
さぁ、それはどうかなぁ?
パリン、と最後に残った一枚のガラスが消え去る。
向こう側の灰色の壁は、もうとっくに消えてなくなっていた。
彼女が僕の目の前に立っている。
潤んだ大きな瞳に、僕の姿が映っていた。
もしかしたら、消えるのは君なのかもしれないよ?
病気の僕こそが、君を作り出したのかも。
「そうね、そうかもしれない」
くすくす笑って、彼女は小首をかしげてみせた。
「これからどうなるのかしら」
そうだね……とりあえず、牢屋は無くなったから。だから手枷も必要ないんじゃないかな。
腕の機械を摘んで見せた。軽く力をいれると、それもパラパラ崩れる。
彼女も僕と同じようにして壊した。
じゃあ、行こうか。
「ええ」
彼女の手を握る、真っ白な世界の端には小さな扉が有った。
きっと『どこか』に繋がる扉だ。
「あそこを潜ったら、貴方居なくなるなんて事ないわよね?」
大丈夫だよ、僕は君で君は僕で。僕らは運命共同体。そうだろ?
「うん、そうよね、わかった。行きましょう」
彼女がその扉に手を伸ばした。
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