37329人が本棚に入れています
本棚に追加
/515ページ
愛と正義 上
「くっ、もう来やがったか」
漆黒のマントを翻し、振り返る先には――
「愛と正義の魔法少女キララ、おまたせ」
語尾にハートを飾る、可憐な少女。
誰もが待っていたのだろう。ただ一人、俺を除いての話だがな。
「ハーハッハッハッ、天が呼ぶ、風が導く、地が叫ぶ! 悪を裁けと……」
筋肉を誇張するかのような青タイツに、全身を包んだオッサン。
「……安らぎ夢見て、振り抜く拳は……」
因みにこの青タイツの前口上は長い。
「防衛戦隊マモレンジャー! レッド、ブルー、イエロー、只今集合!」
長いフリの間に、自己紹介をすませたのは、原色戦闘服に身を包んだ三人組だ。
ビシリと決められたポーズに、一瞬の隙もない。ある意味で恐ろしい奴らだ。
訳ありで世界征服の片棒を担ぐ事になった俺だが……。
この世界には主人公(ヒーロー)が……多すぎた。
半ばヤケクソ気味に、俺は刀を抜刀し、主人公達へと慣行する。
明日の朝日が拝めるかな、と考えながら。
なぜこんな事になったのか?
俺はただの高校生だったのに。
遠い昔に思える今日の朝。始まりは、突然だった。
最初のコメントを投稿しよう!