愛と正義 上

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愛と正義 上

「くっ、もう来やがったか」 漆黒のマントを翻し、振り返る先には―― 「愛と正義の魔法少女キララ、おまたせ」 語尾にハートを飾る、可憐な少女。 誰もが待っていたのだろう。ただ一人、俺を除いての話だがな。 「ハーハッハッハッ、天が呼ぶ、風が導く、地が叫ぶ! 悪を裁けと……」 筋肉を誇張するかのような青タイツに、全身を包んだオッサン。 「……安らぎ夢見て、振り抜く拳は……」 因みにこの青タイツの前口上は長い。 「防衛戦隊マモレンジャー! レッド、ブルー、イエロー、只今集合!」 長いフリの間に、自己紹介をすませたのは、原色戦闘服に身を包んだ三人組だ。 ビシリと決められたポーズに、一瞬の隙もない。ある意味で恐ろしい奴らだ。 訳ありで世界征服の片棒を担ぐ事になった俺だが……。 この世界には主人公(ヒーロー)が……多すぎた。 半ばヤケクソ気味に、俺は刀を抜刀し、主人公達へと慣行する。 明日の朝日が拝めるかな、と考えながら。 なぜこんな事になったのか? 俺はただの高校生だったのに。 遠い昔に思える今日の朝。始まりは、突然だった。
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