愛と正義 エピローグ

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愛と正義 エピローグ

翌朝、俺は自分の部屋でテレビを見ていた。 「巽さん、出来ました!」 嬉しそうに俺の元に駆け寄って来たのは、菫だ。 皿にのる目玉焼きを大事そうに抱え、俺の前に立つ。 「ん、どれどれ」 見てみると、形はいびつだが、きちんと目玉焼きと分かるほどの完成度だ。 菫は教えてやると、そこそこ上手くなり、このレベルまでたどり着けたのだ。 食べてみると、焦げ目が苦いが、食べれないわけではない。 「初めてにしては、上出来じゃないか」 「ありがとうございます」 本当に嬉しそうに笑う奴だな。 微笑ましい光景に、和みかけたときだ。 「ねぇ、巽さん」 「ん?」 「巽さんには、話しても大丈夫だと思うんです。…私の正体」 真剣な眼差しに、空気が張り詰める。 「実は、私は魔法少じょ…」 『魔法少女キララ、おっまたせー!』 菫の言葉は、テレビの音にかき消された。 「……っち、魔法少女か。俺嫌いなんだよね、アイツ」 「え」 俺はテレビに映る魔法少女を睨みつける。 殺されかけたのだ。 好きになれるはずがない。 この場合、嫌いと言うより、苦手と言えばしっくりくる。 完全にトラウマに、なってしまった。菫に悟られまいと、テレビを消した。 「で、何の話だっけ?」 「いえ、何でもありません!」 急に取り繕った笑顔になる菫。 どうしたんだ一体? 「本当に何でもないですから! さあ、今日から学校です! 早く行きましょう!」 「お、おい」 早口に言うと、菫は鞄を片手に玄関口に行ってしまった。 「…可笑しな奴だな」 「巽さーん、早くしないと遅刻しますよー」 「はい、はい」 答えて、鞄を掴む俺は、日常に戻ったような錯覚に陥る。 だが、まだ終わっていない。 鞄の中のベルトには、三週間と表示され、刻々と0に向かいカウントを進めている。 三週間以内に、また恐怖エネルギーを集めないといけない。 この日常を守るためにな。 『愛と正義』編……完
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